直仁の「善き人のための」研究室

読書、ペーパークラフト、フィギュアスケート、散策などの雑感

2014年01月の記事

最近見た映画や読んだ本についてまとめて書く


新年あけて主に録画してあった映画を何本か見たので感想を書いておく。本も一冊読んだのでそれも。

映画「遺体」
石井光太の小説「遺体」を読んだ話は前に書いたが、実写化された映画を見た。読んだ時にも遺体仮安置所の様子に(頭の中の想像だけでも)衝撃を受けたのだが、映画はそれ以上の衝撃だった。安置所の冷気が画面を通して流れてくるようだったし、市の職員の当惑、葛藤、悲しみといった様々な心の機微が俳優さんの演技から伝わってきた。現実はもっとつらいものだったに違いないが、映画としてよく伝えていたと思う。心地よいエンディングなどあり得ない題材で映画は作りにくいだろうと思って見たが、終わらないという終わり方が見る人の心にこの映画に描かれた事実の記憶をいつまでも残すことに成功していた。

映画「北のカナリアたち」
細雪、おはん、夢千代日記で一時期ファンになったことのある吉永小百合様主演の映画。夢千代日記で相手役を演じた松田優作の息子との共演にも何か縁を感じる。松田優作演じるボクサーが餘部の鉄橋を渡る列車の窓ガラスを拳で割ったときに、驚いて逃げるのではなく、血を流すその拳をいたわる行動に出た夢千代の聖母のような心が、この北のカナリアの主人公にも重なった。肉体的にも精神的にも傷を負った人をほってはおけない女性を描くなら吉永小百合様しかいないんじゃなかろうか。物語はかつての教え子達と順に再会しながら、彼女が小学校を去った理由や夫の死の真相を確かめ合うとともに、彼らとの間の誤解も解いていく流れは面白かった。なんといっても、殺人を犯した教え子の一人を演じる森山未来の演技には泣かされた。久しぶりに大量の涙を流した映画だった。

映画「おおかみこどもの雨と雪」
おおかみおとこと恋におち、子供を授かったといういかにも漫画的な導入からは想像できなかった後半の面白さが出色だと思う。雨と雪というのは、二人の子供の名前である。すぐにオオカミに変身してしまう幼い子供たちを都会では育てられないと悟り、田舎の古民家に引っ越してからの母親の頑張りと子供達の自立に人間のドラマを見た。自然風景描写の美しさも気持ちよかった。

映画「パイレーツオブカリビアン 生命の泉」
話の展開についていけなかった。つまり、脈絡をきちんと理解できないまま、次々に場面が展開し、ま、とにかく、最後は黒ひげが死に、主人公とヒロインが無事に助かった、という「考えなくていい」映画だったんだな。

映画「武士の献立」(これは映画館で見た)
映画館では夜の一回しかかからず、見る人もまばらだったが、それなりに面白かった。実在の包丁侍の家系に伝わる記録を元に大名家の食卓や饗応の献立を再現したという。今につながる日本料理の原型がすでに高い水準で完成されていたことがわかって面白かった。加賀藩なので、日本海の海の幸がたくさんでてきていかにも美味しそうだったし、若い夫婦の紆余曲折を経た愛の描き方も上手かった。



観世清和編訳 世阿弥著「風姿花伝」
観世清和氏については、最初は堺雅人さんの「文・堺雅人」を読んで初めて知ったが、その後、NHKの番組に内田樹先生との対談で出演されるのをたまたま見ることがあり、さらに別の番組でも世阿弥生誕650年で能の特集に出演されていたのを重ねて見て、何かこの方に引かれるものがあった。非常に言葉が丁寧で穏やかな語り口にも人柄の良さと懐の大きさを感じる人だと思った。
堺さんが風姿花伝を読んでいるということもあって、自分も読んでみようと思って検索したタイミングで、この本の出版直前であることを知り、予約して購入したくらいである。
果たしてこの本は面白かった。単に風姿花伝を順に訳したものではなく、観世清和氏の芸術論、人生論をその趣旨に沿って風姿花伝の中から重要な部分を抜粋して紹介しながら論じたものである。
印象に残ったところを抜粋する。

「初心わするべからず」  世阿弥のいう初心、それは、己の技量の未熟さのことです。
 ・・・ つまり、自己満足による芸の停滞を強く戒めた言葉なのです。役者は常に、初心、すなわち未熟との戦いです。

散らない花はない、散るゆえに、再び季節が巡って咲くことに人は新鮮さを感じて心を動かすのだ、と世阿弥は花をめでる人の心理に立ち入りながら、花と面白さと新鮮さは同じものだと語ります。そして能もひとつに停滞してはいけないと。


このあとも「秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず」の意味を教えてくれるが、一番おいしいところと思うのでここには書かない。禅問答みたいになってくるが、演劇や音楽などの舞台芸術を生業とする人たちにとっては核心を突く芸術論がここにあると思う。


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