直仁の「善き人のための」研究室

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「デフレの正体」 を読んだ

藻谷浩介「デフレの正体」を読んだ。
しばらく前から店頭で見かける新書本だがタイトルからは読む気がしなかった。
一過性の独断的経済評論だろうってな感じで敬遠したくなるタイプのタイトルだ。
それでも、池上彰氏がお勧めらしいし、30万部とか40万部とか売れているという帯に惑わされて買ってしまった。

しかし読んでみて正解だった。これはお薦め本である。
(東北の震災によって経済がさらに打撃を受けている現状だが、なおさら本書の主張の認識無しに長期的に日本が元気を取り戻す事はできないだろう。復興の先に何が待っているのかを皆知っておかなければ・・・)

以下、要約。
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日本の国内経済の不景気感の原因連鎖は
団塊世代の一次退職
⇒彼等の年収の減少
⇒彼等の消費の減退
⇒内需対応産業の一層の供給過剰感
⇒内需対応産業の商品・サービスの値崩れ
⇒内需対応産業の採算悪化
⇒内需対応産業の採用抑制・人件費抑制
⇒内需の一層の減退という国内経済縮小の流れ
ということ

国内消費は、生産年齢人口に比例する。つまり、物を沢山買うのは就業者=現役世代であり、それは統計上の生産年齢人口(広めに取って15歳~64歳)に比例する。65歳以上の退職者は老後のリスクに備えて貯蓄に走るし、体力もあまりないから消費活動は低迷する。
国内消費を反映する国内小売販売額はここ12年間減少傾向であり、個人所得総額の減少傾向とリンクしている。
個人所得総額は就業者数に比例する。
就業者数は生産年齢人口に比例する。
生産年齢人口は、1995年がピークで、それ以降減り続けている。日本人の年齢別人口の形の特徴は戦後のベビーブームによる団塊世代と、その子ども世代である団塊ジュニアが形作っている。
生産年齢人口は次の様な推移。
1940年  4295万人
1950年  4966万人
1960年  6000万人
1970年  7157万人
1985年  8251万人
1995年  8716万人
2005年  8442万人
2015年  7681万人(予想)
2025年  7096万人(予想)
1995年からの生産年齢人口減少傾向に応じて、2000年から新車販売台数、小売販売額は12年間、出版は1996年から、2000年から国内貨物総輸送量、2002年から旅客輸送量、2002年から酒類販売量、ビールだけなら1997年から、一人当たり水道使用量は1997年から・・・減少傾向である。この間2002年から2007年の輸出主導の好景気だったはずなのにである。輸出はずっと好景気でリーマンショックがあっても、輸出黒字であって、今後も増加傾向である。輸出企業は今後も儲かり、企業の株主になっている高齢富裕層の財布も潤う、というのにである。
ちなみに日本と地方の長期債務は1000兆円あるが、日本人個人と日本企業の金融資産は1400兆円あるそうだ。1400兆円の金融資産があれば、1%でも消費に回せば、国内経済はドラスティックに改善するというのに、ほとんど溜め込んでいてお金が回っていない。

ゆえに、輸出はいいが、問題は内需の縮小である。その原因は人口の波=生産年齢人口の減少である。
今後とも日本では定年退職者>新規学卒者の傾向が続く。

(理系人間なので経済には疎く、付加価値額という考え方を初めて知った。情けない。)
労働生産性を上げればGDPが上がり景気は上向くという考え方へも一石。労働生産性は付加価値額を労働者数で割ったものである。多くの企業が生産性を向上させるために、自動化・機械化して労働者数を減らす方向や、人件費カットや納入企業の買いたたきでコストダウンに精を出している。一次的に利益が得られ、株主配当を確保できるが、長期的には内需縮小に進み、どの企業も売り上げダウンになることに気がつかない。コストダウンに走れば、付加価値が減少し、GDPが伸び悩み、人が物を買わなくなり、売り上げが落ちるのである。
付加価値額とは、利益+人件費+地元に落ちるコストということだから、人件費を減らせば付加価値額も減り、GDPも下がる。

日本では、一人当たりの消費水準がすでに高く、しかも人口が減っているので、総額としての経済成長は期待できないということを認識すべきである。

「ものづくり技術の革新」で頑張れば良いという意見もあるが、それは、外貨を獲得して国際的に生き残っていくための必要条件であり絶対必要だが、残念ながら、その外貨を国内で廻すことには直接関係せず国内需要は増えない(人口が減るのだから)。事実、00年から07年の7年間は外貨を多く獲得したが、内需は低迷した。獲得した外貨は誰が持ってるの??(企業と株主である高齢富裕層。彼等は消費を増やさない。と著者は言う。ここの検証は必要だが、事実、国内の小売販売総額は減っているのだから、それに貢献はしていないはずという主張。)

対処法は3つ
①高齢富裕層から若者への所得移転
 -団塊世代の退職で浮く人件費の一部でも若者の給料に回して、子育て世代の社員への手当や福利厚生を充実させる。それによって若者が消費するようにする。これから25年で生産年齢人口が3割も減るのだから、国内消費がさらに落ち込むのは目に見えている。現役世代が消費を増やせるようにしないと企業が自滅する。
 -生前贈与の促進(政府の政策として)をする。現状、遺産相続の受取者の平均年齢が67歳と高齢化しており、相続された財産は消費に回らず、老後リスクのために貯蓄されてしまう傾向がある。財産の一部を早めに子どもに渡して節税することを進める政策を提案する。

②女性の就労と経営参加
 現役世代の専業主婦は1200万人いる。その40%が働くだけで、団塊世代の退職を補える。女性が収入を得れば、男性よりも消費してくれ、内需を支えてくれる。外国人を雇うよりも、教育水準が高くて就職経験があり能力も高いし社会保障制度などのインフラもできている(外国人はその負担がある)。

③外国人観光客・短期定住者の受け入れ
 外国人観光客は効率の良い内需拡大策である。08年で1兆円だが、日本は他国に比べて低水準であり、数兆円の伸び代はある。観光誘致に政府がお金を使えば投資効率は非常に高い。観光収入は人件費の比率が多く付加価値率が高い。

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だいぶ長くなったが、受け売りたい主張はもっとある。
どの論拠も誰でも入手できる公開データであり、自分で確認してくれ、と言っている。
たぶんそうなのだろう。嘘は無いと思う。
様々なデータ間の相関は確かにうなずけるし、論旨は論理的で納得できる。

それとともに今後企業が何もしなければ今後の日本の景気に明るい展望は無いことになる。50年以上先には違っているだろうけれど。これからの50年の間は内需の落ち込みが必至であることが、この論から誰でも予想できる。対処法の①は是非とも日本の主な企業で一斉にやって欲しいものだし、生前贈与をした方がお得になるように政策を考えてほしい。③も賛成だが、この本が出版されたあと、東北の震災と原発事故で観光客は減っているのでつらい状況だが、なおさら観光誘致に力を入れるべきである。

他の本を読んだら他の説があって景気の予想も違うのかもしれない。けれども、本書の言ってることは直感的に正しい気がする。
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