直仁の「善き人のための」研究室

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「教養としての資源問題」を読んだ

会社の図書室で借りた本を読んで、図書室の社内メルマガにレビューを書くという仕事をしている関係で、谷口正次「教養としての資源問題」というちょっと堅い本を読んだ。レビューを書いてみたのでここに紹介する。

映画「アバター」をご存じか。本書はこの映画を次の様に説明する。「今現実に世界の発展途上国で起きている事実にもとづくフィクションだ。その事実とは、強大な資金力、技術力、政治力を持った資源メジャー(探鉱会社、鉱山会社)が、途上国において、豊かな自然と共生している先住民を強制的に移住させ、自然を破壊して資源採掘を行っていることだ。抵抗する先住民には戦争請負会社や国の正規軍が排除にあたる。」映画のラストは先住民族である青い異星人達が、地球人の軍隊に勝つ。米国の保守派の人達はこれを反米映画ととらえ米軍海兵隊を侮辱すると批判し、アカデミー賞最有力候補でありながら受賞できなかった。
本書はメタル資源を確保しようとする世界各国の資源メジャーの開発行為が、資源争奪戦、権益を巡る腐敗と紛争、自然環境破壊、先住民族の強制移住、戦争請負会社の暗躍、人権侵害、違法労働、文化、伝統の破壊を引き起こしている現状と、結果として、鉱物資源が多い途上国が「資源の呪い」にかかって崩壊して行く生々しい姿を描いている。こうして得られた鉱物資源を、どのように得られたのか知らずに購入して「ものづくり」をしている日本の企業は本当にCSRを果たしているのかと警鐘を鳴らす。
近年の中国の新植民地主義の強烈さには驚かされる。政情不安定なアフガニスタンには、鉄鉱石、銅、コバルト、金、リチウムの大規模鉱床があり、中国とアメリカが政治的・外交的に鍔迫り合いをしているなど、世界各地での資源争奪戦の様子も解説されているが、日本は座して見守るのみか。
日本にとっては、近海の経済的排他水域内にある海底鉱床を開発すべきだという。コバルト・リッチ・クラストという、海水中の金属が沈殿固着した海底の岩盤上の数センチ~数十センチの層で、マンガン、ニッケル、コバルト、鉄、銅、モリブデン、チタン、レアアース、プラチナなどが含まれていて、価値にして100兆円以上の賦存量があるという。陸地資源は政治的・地政学的問題が多く、開発に時間がかかるため、最近は各国とも海底鉱床の開発に狙いが変化していきているという。先般の尖閣諸島沖の問題もこうしたことが背景にあるのではないか。
「ものづくり」に必要な原料資源の川上の状況を教養として知ることの必要性は本書を読めばわかる。少なくとも技術者にとって今後の技術開発の方向性の考え方に影響を与えることは必至である。是非、一読されたい。
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