直仁の「善き人のための」研究室

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ピアノ調律師が書いた「美音の架け橋」

ピアノを弾く人にはお薦めの本である。
ピアノを弾かなくても、聴くだけの人にも読んでほしい。

ピアノ調律師であり、ピアノ販売店を経営しているという松永正行さんが、スタインウェイアカデミーの技術認定試験を受けた時の体験記である。約2週間にわたり行われた認定試験の様子が、オフの時間の出来事や、かつて自分を指導してくれた調律の師匠から教わったこと、共に音を追求してくれるピアニストとの活動、などが挿入されながら仔細に語られている。
ピアノの構造や整調、整音、調律のやり方が細かく書かれているので、素人にはわからない部分も多いが、それでも写真もあるので何とかついていける。木とネジとピアノ線とフェルトでできた動力源の無い組み立て機構なのだから、ブラックボックスは何もない。本来そんなに難しいものでは無いはず。
一歩下がって、技術の内容は理解できなくても、いかにピアノの音作りが大変かがよくわかる。とても常人には勤まらない仕事だと思うのだが、それでも正解は無い世界だということも、この方の音を追求する意志や行動からよくわかる。
ミケランジェリがどのくらいすごい演奏技術を持っていたかということや、クリスチャン・ツィメルマンが自ら調律も手掛ける契機や音への拘りを講演でどう話したかも紹介されていて面白い。単にピアノという楽器単体ではなく、ホールの音響も考慮に入れた音の調整をどんな風に考えて、ピアニストと調律師が向っているのか、・・・すごい世界だと思う。
一方で、ホール専属の調律師との関係の難しさやピアノ業界の裏事情も少し書かれていて、一介のサラリーマンには物珍しい世界を垣間見る事が出来た。とは言っても、妻がピアノを弾くし、懇意にしている調律師の方は名古屋のヤマハの第一人者であるので、人ごととは思えない。

ピアノを弾く人が音を徹底的に極めたいならば、ピアノの構造を知り、タッチとペダルと音色の関係をやはり理解すべきだろう。何となくではなく、メカニズムとして理解し、実験しながら音の出し方、出方を自分のものにしていく。そういうつきつめ方をしたいなら、すぐれた調律師と出会い、共に音作りをしていくのがあるべき姿だということをわからせてくれた。


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