直仁の「善き人のための」研究室

読書、ペーパークラフト、フィギュアスケート、散策などの雑感

珈琲


いくつかのコーヒー専門店の珈琲豆を試してきたのだけれど、最近結局かつて好きで毎月注文していたお店に戻ってきた。一時期は近くの商店街にある珈琲豆専門店で買ったり、たまたまカミさんが知人と行って美味しかった店の豆を買ってきたり、スーパーの珈琲豆売り場で見かけたコーヒー専門店の特別なブレンドを試したりしていたのだが、続けて買おうと思うほどのものにはいまだ巡り合っていない。

もともと家ではカミさんがよく飲むほうで、僕は午前中に飲むと腹が下るので控えていた。そのカミさんが、やっぱり「びぎん」の珈琲が飲みたいと言うので、ネットで注文してみた。かつては電話で注文し、郵便振込で後払いしていたが、オンラインで決済できるようになっていたので楽だ。

「珈琲びぎん」のレギュラーブレンドは最高だと思う。濃い味に慣れてない人にはきついかもしれないが、それに慣れれば病みつきになる。香りと後味がたまらない。

夜帰宅するとマンションのロビーに珈琲の香りがしているので、ポストに届いていることがすぐにわかる。一応真空パック二重にしてあるはずのに、芳醇な香りが漂い出ているのである。なんでだろう。
豆は深煎りで、脂ぎってつやつやしているのが特徴だ。これをハンドミルでゆっくり挽く。20年以上使い続けている専用のステンレスポットでゆっくりとドリップする。挽いて香り、ドリップして香り、カップを口に近づけて薫る。そして一口飲む。ああ、やっぱり「びぎん」の珈琲だと思う。味は変わらない。僕がまだ独身の頃知った味が変わらないというのも有難いし、凄いことだ。もちろん、お店の歴史はもっと古い。今の店主が二代目というから、鰻屋の秘伝のタレみたいに、その店の秘伝があるのだろう。珈琲の味を決めるのは、豆と焙煎だと思うのだが、ずっと変わらず同じ品質の豆を仕入れ続けているのだろうか。ブレンドだから、数種類の豆が何十年と変わらず手に入っているとしたらすごい。それとも、豆生産農園は違っても同じ産地の豆ならば、焙煎で味が決まるのだろうか。

びぎんの珈琲はさぞや名古屋で有名で、珈琲好きな人には断然の人気なのだろうと勝手に想像し、Googleで検索してみた。食べログに出ているが、いくつかの口コミを読んでみると意外にベタ褒めではない。ブログで紹介している人もいるが、「行って見た」程度に書いてあったり、レギュラーブレンドではなくモカブレンドを評していたり、様々だ。自分が思うほどにこの珈琲を最高と思っている人は多くはないのかもしれない。

美味しいと思うその感覚が多様なのは当たり前のことだが、珈琲のようなそれほどバリエーションのない飲物なら万国共通の味の基準があってもいいんじゃないかと思いたいところだが、そう単純ではない。珈琲だって、ビールやワインや日本酒や焼酎のように産地や銘柄ではっきりと味も香りも違っているし、人によって好みは異なる。インスタントで充分という人もいるだろうし、イタリア料理の食後に出されるデミタスが好きという人もいるだろう。酸っぱい系のモカが好きという人は明らかに自分には理解できないだろうし、彼らはビギンのレギュラーブレンドを好きにはなれないだろう。

そもそも珈琲に美味しさを求めない人もきっと多い。喫茶店に行けば珈琲を注文する。僕の基準で行けば、美味しい珈琲を出さない店は失格でかならずその店は潰れるはずだ、ということになるが、必ずしもそうではない。どちらかと言えばそうではない喫茶店の方が多数派だと思う。人々が喫茶店に求めるものも行く理由も様々で、純粋に美味しい珈琲を飲みたくて行く人は逆に少数派だ。コメダのようにザワザワしていても席に座ると落ち着いてしまい長居したくなる店があれば、カントリー調のインテリアが感じよくて「オシャレ」なお店だから行く人もいる。名古屋近辺はモーニングが食べたくて行く人も多いだろう。珈琲に砂糖とミルクを入れたら、味の違いもわからなくなってしまいそうだ(以前FMラジオの日曜喫茶室という番組の司会者が、美味しい珈琲は、砂糖とミルクを入れて美味しいのが本当に美味しい珈琲なんだと力説していたので、本当はそうなのかもしれず、僕のようなブラック派は味覚が偏ってるのかも、と思ったりもする。)。カフェならスタバという「スタバ信仰」を持ってるんではないかと思いたくなるような発言をする友人もいる。びぎんのお店は、半地下にあるせいか少し暗い雰囲気なので、初めて入るには勇気が必要な人もいるようだし、カウンターだけで珈琲しか出さない店なので、珈琲を味わいにくるか、純粋にたまたま時間を潰すために通りがかりに寄った人しか来ないんじゃないかな。だから、いわゆるオシャレな喫茶店に求められるような綺麗さやセンスは残念ながら無い。逆に昔ながらの雰囲気が良くて落ち着ける人もいるかもしれない。店主は白衣を着ていて、カウンター越しにすべての様子が見えるから、実験現場を観察しているようで自分なんかにはそれが面白い。

びぎんのレギュラーブレンドは、胃薬かと思う時がある。好きな食事の予定があるのに胃腸の調子が悪い時に、食前に大正漢方胃腸薬を飲むことがある。飲んで暫くすると急に空腹になってくる。胃が空になったような感じだ。びぎんのレギュラーブレンドを飲むと同じように腹が減ってくる。会社で来客があって珈琲を飲んだ時や出張先で時間潰しのために見知らぬ喫茶店に入って珈琲を飲んだ時など(つまりびぎんのレギュラーブレンド以外の珈琲を飲んだ場合のすべて)、珈琲が胃の中に残り続けて、食事が重くなる経験をする。これと逆だから可笑しい。

どこそこのしかじかの料理は美味しかったと人に言いたくなるのはなんでだ?
グルメ話はたいてい独りよがりの自慢話になってしまうし、押し付けがましければ疎まれる。
どうせこんなところにくどくどと珈琲の紹介話を書いても、試してみようという人は十人にひとりかどうかだろうし、試したとしても同じような感想を持ってくれる人も多くはないかもしれない。けれど、なんだか美味しさを共有したいんだろうな。で、暇に任せて書いたら結構長くなってしまった。



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